太古の地球の姿を宿した渓谷地帯
■世界遺産登録名/グレーター・ブルーマウンテンズ地域
シドニーは人口400万を超えるオーストラリア最大の街。そんな大都市から車で1時間半のところに、大滝や苔むした森、古代の洞窟など、太古の地球の姿を宿した渓谷地帯が広がっている。
深い谷を覆っているのはユーカリの森だ。ユーカリは油分を多く含んだ植物。山火事が起こるとユーカリはその油を炎に注ぎ、一帯の木々を焼き尽くす。硬い幹をもつユーカリは炎のなかを生き残り、子孫を増やすのだという。人間には想像もおよばない自然の生態の不思議な営みがそこにある。
1994年、この地で植物学上の大発見があった。化石から2億年の歴史をもつと推定され、絶滅したと考えられてきた樹木の生息が確認されたのだ。この太古の樹木はウォレマイ・パインと名づけられた。保護の観点から正確な生息地は公表されていないが、最近では繁殖させた木が販売されている。
ブルーマウンテンズのシンボル的存在はスリー・シスターズと呼ばれる3つの岩塔。3人姉妹が魔法によって石に姿を変えられたというアボリジニの伝説が残る奇岩で、ここから周囲を見下ろせば目もくらむような大渓谷の風景が広がっている。