No.19 コルドバ歴史地区〔スペイン〕|週刊 世界遺産×富井義夫 - 最新ヨーロッパの人気世界遺産めぐり

No.19
2014年8月24日

〔スペイン〕

コルドバ歴史地区

Historic Centre of Cordoba

 紀元前2世紀には、すでに古代ローマの支配下で繁栄していたコルドバの町。711年にイスラム王朝が進出し、後ウマイヤ朝の首都になると、以後500年近くにわたってイスラム文化の華が開いた。その栄華を象徴する建物がイスラム寺院のメスキータ(スペイン語で「モスク」の意味)である。
 馬蹄型のアーチはイスラム建築の重要な要素だが、これを支えるメスキータの円柱は、現存するものだけで800本を超える。これだけの数の円柱に支えられたアーチが延々と続く空間は鮮烈で、イスラム建築の匠の技に圧倒されてしまった。
 1236年、レコンキスタ(キリスト教徒の再征服運動)によって、イスラムの町コルドバは終焉を告げた。グラナダ陥落より250年以上前の出来事である。キリスト教時代に入ると、メスキータの一部は取り壊されて豪華な装飾が施されたキリスト教の礼拝堂に改築された。つまり、モスクのなかにキリスト教の礼拝堂が同居するという稀な存在になったわけだ。
 礼拝堂をのぞいてみると、立派な聖体顕示台が置かれ、壁には十字架に懸けられたイエス・キリスト像が掲げられていた。キリスト教の聖堂の屋根はメスキータの屋根から突き出てしまっている。キリスト教徒が250年もの歳月をかけて築いたという礼拝堂だが、わたしたちが惹かれるのはやはり「円柱の森」と称賛されるイスラムのモスクだ。
 メスキータの北側にはかつてのユダヤ人街が残る一角がある。レコンキスタはある意味、異教徒の排斥運動でもあり、レコンキスタ完了直後にキリスト教国はユダヤ人に追放令を出して改宗か死刑かを迫った。このとき迫害を逃れたユダヤ人は、モロッコのフェズなどに移り住んでいる。
 入り組んだ細い路地が続くユダヤ人街特有の街並みはいまも健在。ふとのぞいた民家のパティオ(中庭)がきれいで、撮影したい旨を伝えたらすんなりOKしてくれた。ご主人の話では、パティオのコンクールも毎年開催されているそうだ。
 この界隈にはイスラムと西欧の建築様式が融合して生まれた「ムデハル」と呼ばれる様式で建てられたユダヤ人教会も残っている。イスラム教、キリスト教、ユダヤ教の文化が溶け合ってできた独特の景観に、不思議な魅力を宿しているのが現在のコルドバの町だ。
 仕事柄、「いままで行ったところで、どこが良かったですか」とよく聞かれるが、コルドバのあるスペインのアンダルシア地方は間違いなくそのひとつ。カトリックの国でありながらイスラム文化の薫りを色濃く残す独特の魅力的な町が点在し、気温は高くても湿気が少ないのでとても過ごしやすい。機会があれば一度、訪ねてみて欲しいお薦めの土地だ。
富井義夫




アクセス:コルドバ歴史地区〔スペイン〕 【所在地】
スペイン南部、アンダルシア州コルドバ県の県都。コルドバはイスラム教、ユダヤ教、キリスト教の文化が融合した商業都市で、メスキータ(大モスク)に代表されるように異文化がミックスされた、独特の雰囲気を持っている。

【アクセス】
マドリード・アトーチャ駅からコルドバ駅まで高速列車で約1時間40分。