Warning: file_get_contents(http://graph.facebook.com/http%3A%2F%2Fwww.tomiiyoshio.com%2Feu%2F6808): failed to open stream: HTTP request failed! HTTP/1.1 403 Forbidden in /home/sites/heteml/users/s/h/a/shashinkoubou/web/tomiiyoshio/blog_eu.php on line 173

No.07 サンクト・ペテルブルグ歴史地区と関連建造物群〔ロシア〕|週刊 世界遺産×富井義夫 - 最新ヨーロッパの人気世界遺産めぐり

No.07
2014年6月1日

〔ロシア〕

サンクト・ペテルブルグ歴史地区と関連建造物群

Historic Centre of Saint Petersburg and Related Groups of Monuments

 アメリカ合衆国と並ぶ二大国家として大きな影響力をもっていたソ連。そんな時代がついこの間のことのように感じられる。それほどまでにあのころのソ連の存在感は大きかったのだろう。
 ソビエト連邦は1999年に崩壊したが、ソ連以前の200年間、ユーラシア大陸北部の広大な地域を支配していたのがロシア帝国である。その首都がサンクト・ペテルブルグだった。街はソ連時代にペトログラード、レニングラードと名を変えたが、1991年に行なわれた国民投票でサンクト・ペテルブルグという旧名に戻っている。
 18世紀にこの街を築いたのはピョートル大帝だ。ピョートル大帝はヨーロッパ諸国と文化的にも対等に渡り合える近代国家を目指し、その窓口となるようなまったく新しい人工都市の建設に着手した。しかし、建設予定地はネヴァ川の泥炭地。過酷な使役の上に川が氾濫して疫病が蔓延するなど、完成までには膨大な犠牲が払われたという。その後、エカテリーナ2世の時代に入って、サンクト・ペテルブルグはヨーロッパの列強諸国と肩を並べる文化・芸術の都として一気に開花した。
 外政では領土拡大を押し進めたエカテリーナ2世だが美術品の収集にも熱心で、ベルリンで西欧絵画を大量に買い付けるとエルミタージュと名付けた私的サロンに運び込んで密かに楽しんでいた。エルミタージュとはフランス語で"隠れ家"の意味。その入口には次のような言葉が掲げられていたという。
「この扉を通る者、帽子とすべての官位、身分の誇示、傲慢さを捨て去るべし、そして陽気であるべし」
ここからエルミタージュ美術館の歴史が始まった。
 入場者がまず目にするのは、真っ白な大理石で設えられた豪奢な階段「大使の階段」だ。もともと歴代皇帝が暮らす壮麗な宮殿だったエルミタージュ。ホールや客間の絢爛豪華さは、並みの美術館とは比べものにならない。
 現在のエルミタージュの所蔵作品は300万点以上。私的サロンから世界屈指の美術館へと変貌を遂げたわけだ。
 展示されている画家の名前をざっと挙げてみても、マチス、ピカソから、レオナルド・ダ・ビンチ、レンブラント、ゴーギャン、モネ、エル・グレコと西欧絵画の巨匠たちがずらりと並ぶ。
 サンクト・ペテルブルグといえば、バレエを思い起こす人も多いかもしれない。日本でも親しまれているレニングラード国立バレエの本拠地もこの街にある。西欧から導入されたロシアの宮廷バレエは、チャイコフスキーが現れて叙情性あふれるバレエ音楽を生み出したことで新境地を切り開き、一躍、世界の中心となった。
 チャイコフスキーの三大バレエ「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「眠りの森の美女」もサンクト・ペテルブルグで生まれたものである。
 この街を歩きながら不思議だなと感じたのは、巨大都市にもかかわらず、目新しい改築がなされたふうでもなく、建物や通りに昔の雰囲気が染みついているように見えたこと。どこか19世紀の風情がそのまま残っているような町の佇まいを感じる。
 街でいちばんの繁華街は昔も今もネフスキー大通り。カザン聖堂をはじめ歴史的建造物が並ぶ。この通りからグリボエードフ運河が逆S字型に蛇行するあたりまで歩くと、かつて安居酒屋が立ち並び、下級官吏や貧しい大学生、私娼婦たちが住んでいたエリアに入る。文豪ドストエフスキーが暮らし、『罪と罰』のモデルに設定した界隈だ。
 ここまで来ると若干、観光ルートからは外れてしまうが、ときには表通りとは異なる街の匂いを感じてみるのも悪くないだろう。たとえば『罪と罰』のような小説ゆかりの場所をたどってみる。そこは宮廷文化の華やかさとはかけ離れた少し陰のある町だが、それもまた大都市サンクト・ペテルブルグのひとつの顔。市井に生きる人々の物語が見え隠れして、大都会の風景もそれまでとは違って見えてくるかもしれない。
 午後10時を回ってもまだまだ宵の口という白夜のサンクト・ペテルブルグ。あらゆるものを飲み込んでいる幻想的な人工都市である。
富井義夫




アクセス:タリン歴史地区(旧市街)〔エストニア〕 【所在地】
ロシア北西部、サンクト・ペテルブルグ州の州都。帝政ロシア時代の首都で、ネヴァ川左岸の中心部と対岸のペトロパヴロフスク要塞、ワシリエフスキー島の3地区が文化遺産の中心となっている。

【アクセス】
モスクワのシェレメチェヴォ1空港からサンクト・ペテルブルグのプールコヴォ1空港まで飛行機で約1時間30分、空港から市街までバスで約1時間。