No.24 サン・テミリオン地域〔フランス〕|週刊 世界遺産×富井義夫 - 最新ヨーロッパの人気世界遺産めぐり

No.24
2014年9月28日

〔フランス〕

サン・テミリオン地域

Jurisdiction of Saint-Emilion

 ぶどう畑のスケールがとにかく半端じゃない。教会の裏手から丘陵地の先まで、見渡す限りのぶどう畑。そんな緑豊かな風景が延々と続いている。ボルドー近郊のワイン産地のひとつサン・テミリオンは、800年にわたるワイン生産の歴史を誇る村。ぶどう畑そのものが世界遺産に登録されているのも、世界中でこことスイスのラヴォーだけだ。
 聞いてみると、おいしいワインを生み出す鍵はどうやら石灰と粘土質でできたサン・テミリオンの土にあるらしい。滋養に富んだ土壌と地域ごとに微妙に異なる天候がもたらす環境が、良質のぶどうを育てるのだという。
 ボルドー近郊ではぶどう畑に併設された醸造所のことを「シャトー」というが、中小のシャトーがひしめき合っているのもサン・テミリオンの特徴だ。つまり先祖代々、ぶどう栽培とワイン造りが引き継がれてきた村なのである。当然ながら、一つ一つのシャトーがそれぞれ、手作りならではの独自の味わいをもっている。
 そんなシャトーを訪ねてみたのだが、フレンドリーな応対でワイン造りについてあれこれ教えてくれるのがまたいい。カーヴ(貯蔵庫)を見学し、テイスティングを楽しむ。本当においしいものはその土地に合う作物を育てて、手間暇かけてつくられる。ワインもまたしかり。
 広大なぶどう畑に対して、サン・テミリオンは人口4000人にも満たない小さな村。アップダウンの続く細い石畳の坂道と石造りの建物のなかを歩いてみたが、中世の村の飾らない趣が漂っていた。むろん通りには、ワインの村ならではのバーやワインショップ、ワイングッズを揃えた店が軒を連ねている。
 翌朝、見晴らしのいい教会前のテラスから、丘陵地と家々が寄り集まった村を眺めてみた。晴れ渡った空の下、なんともいえない心地良い風が吹き抜けていく。この一帯は、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼路の宿場町としても栄えたところ。この小さくて居心地のいい村に一夜の宿を求めた巡礼者たちも、疲れた身体をワインで癒して旅立っていったのだろうか。
富井義夫




【所在地】
フランス南西部、アキテーヌ地方ジロンド県の、ボルドーと並ぶワインの名産地。ボルドー市の東北東約35kmに位置し、ドルドーニュ川右岸の丘陵地には広大なぶどう畑と歴史的な建造物が点在している。

【アクセス】
パリ・モンパルナス駅からTGV(新幹線)でボルドーまで約3時間、そこから車で約15分。