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No.20 グラナダのアルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシン地区〔スペイン〕|週刊 世界遺産×富井義夫 - 最新ヨーロッパの人気世界遺産めぐり

No.20
2014年8月31日

〔スペイン〕

グラナダのアルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシン地区

Alhambra, Generalife and Albayzín, Granada

 「グラナダ陥落」という歴史的事実は学校でも教わるから覚えている人も多いだろう。わたしもその言葉だけが記憶に残っていたひとりだが、スペインを訪れる機会が増えるにつれ、その事実が意味するところは教科書の世界よりもはるかに大きく、以後の町のつくりや人々の暮らしを根底から変えた大転換期だったのだということを思い知った。
 イスラム王朝ウマイヤ朝の軍がイベリア半島に上陸してグラナダを占領したのは711年。以後、1492年に陥落するまでの780年間、この町はイスラム王朝の最重要都市として栄華を極めた。780年間といえば、これは「占領」というより、土地に根づいた国になっていたはず。そんな国家と文化が滅びたのだから、とてつもない出来事だったに違いない。
 世界遺産にはアルハンブラ宮殿、王の避暑地として造られたヘネラリーフェ、グラナダ最古の居住区であるアルバイシン地区が登録されているが、どれもイスラム王朝の繁栄がうかがえる重要な場所だ。
 そのなかでも有名なアルハンブラ宮殿は、陥落前の最後のイスラム王朝であるナスル朝(グラナダ王国)時代に建築されたもの。このころにはすでに絶頂期の勢いはなかったが、グラナダ王国は近隣のキリスト諸国ともうまくわたり合って独立を保ち、文化的には円熟期を迎えて、ヨーロッパで最後のイスラム文化の花を咲かせた。
 宮殿は町を見下ろす小高い丘の上に建っている。宮殿の内部は、気の遠くなるほど緻密で華麗なアラベスク(アラブ風装飾)で覆われている。アラベスクは草花や動物、アラビア文字を文様化したイスラム独特の装飾だが、世界各地のイスラム教の宮殿やモスクでも同じものを撮影してきたわたしにとっては、「ああ、ここにも卓越したイスラム文化の国があったのだな」と納得できる証しでもあった。
 もうひとつ見逃せないのは「二人姉妹の間」と呼ばれる部屋の天井を彩る、鍾乳洞を彷彿とさせるような装飾だ。天窓から差し込む陽光がこの彫刻に反射して、幻想的な美しさを生み出している。
 ライオンのパティオも幾何学的なシンメトリーが美しい中庭である。中央に設置された噴水を囲んでいる12頭のライオンは時計の役割を担っていて、時刻がくると該当するライオンの口から水が流れる仕組みになっていたらしい。
 一陣の風が吹くと、水面に映った建物が美しく揺れるアラヤネスのパティオも一見の価値がある。アラブの砂漠地帯では、水は何物にも代えがたい象徴なのだろうか。宮殿内はどこも豊かな水で溢れている。
 人さえ少なければ、緑の草木のなかに水音が聞こえる、小さくて美しいパティオは本当に心休まるオアシスである。考えてみれば、この宮殿ほど威圧的なつくりとは無縁の建物、人の等身大の目線から心地よく美しい世界を創り出すことに徹した建造物は、あまり見たことがないような気がする。壮大な宮殿や町を睥睨するように建つ歴史的建造物は多い。それに対してこの宮殿は、外観は特に力を誇示するふうでもない赤壁の質素なつくりなのに、建物に一歩入ると華麗な装飾やパティオの優雅なたたずまいが待っていて、ついつい魅了されてしまうのだ。
 戦争では敵対者の象徴的な建物を破壊してしまうケースが多いが、幸いにもアルハンブラ宮殿が消えてなくなることはなかった。宮殿の開城とともに800年近くにわたったイベリア半島のイスラム文化には幕が閉じられたけれども、建物や当時の居住区が残っているから、わたしたちはイスラム世界の賑わいを見せていた、グラナダの遠い日の情景に思いを馳せることができる。
 高台から見た、夕陽に赤く染まるアルハンブラ宮殿の残像がいまでもふと脳裏に浮かぶ。シエラ・ネバタ山脈を背景に建つ宮殿の雄姿は、紛れもなくヨーロッパで花開いたイスラム文化の象徴である。
富井義夫




アクセス:グラナダのアルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシン地区〔スペイン〕 【所在地】
スペイン南部、アンダルシア州グラナダ県の県都。アルハンブラ宮殿やヘネラリーフェ離宮のほか、グラナダ最古の居住区で、アラブ風の街並みが残るアルバイシン地区が見所。

【アクセス】
アンダルシア州の州都、セビーリャから特急列車で約3時間。