No.26 ケルン大聖堂〔ドイツ〕|週刊 世界遺産×富井義夫 - 最新ヨーロッパの人気世界遺産めぐり

No.26
2014年10月12日

〔ドイツ〕

ケルン大聖堂

Cologne Cathedral

 ドイツ鉄道"DB"は、日本のJRに匹敵するドイツ最大の鉄道会社だ。その主要幹線駅であるケルン中央駅を出たとたん、のしかかるように迫ってきたのが大聖堂だった。天を突くようにそびえる建物の第一印象は、重々しくてとにかく巨大だということ。100万の人口を抱える産業都市のメイン駅の目の前で、これだけの偉容を見せている世界遺産の建造物も珍しいのではないか。
 とりあえず、2つの塔を見上げるようにしながら建物の外観を観察してみる。大聖堂の高さは157m。634mの東京スカイツリーには遠く及ばないけれど、石塊を積み上げた重厚な造り、壁面に散りばめられた手の込んだ彫刻からは、現代の建築物では味わえない、凄まじい存在感と深い歴史の刻印が見てとれる。
 この聖堂の建築が始まったのは1248年。完成が1880年だから、ざっと600年以上の歳月が流れている計算になる! ただし、その間の300年ほどは、財政難やルターの宗教改革によるカトリック界の権威の失墜もあって、工事は完全にストップしてしまったらしい。造りかけで300年もそのままだったというもすごい話だが、工事の中断というよりはほとんど放置に近い状況だったのではないだろうか。内陣はできていたというが、廃墟に近い状態を想像する方が易しい。
 それが、19世紀に着工時のオリジナル図面が発見されたことから事態は一変する。折しもナポレオンの支配が終わり、ドイツは統一の気運が一気に高まっていた時代。時流に乗った格好で未完成の建物はドイツ統一のシンボルにまつり上げられ、建築の続行が決まったのだった。
 現在の大聖堂のすごいところは、このオリジナル図面に従って最後まで建築作業が続けられたことにある。つまり、13世紀以降の信者たちが熱烈に求めてついに手にすることができなかった「理想の祈りの場」が現代に甦ったわけだ。
 内陣ですばらしかったのは、礼拝堂にはめ込まれたステンドグラス。字の読めない信徒にも教義が理解できるように、ステンドグラスには聖書の逸話が描かれている。活字を読んだり、説教を聴くのとはまた違った強く心を揺さぶる世界が、この包み込むような光の世界にはあるような気がする。
 大きすぎる大聖堂は、駅前では全容を写真に収めることができなかった。距離をおくためにライン川に架かるドイツァー橋まで歩いたのだが、街角で振り返るたびに大聖堂の双塔が町を睥睨するようにそびえ立っていて、強く印象に残った。
富井義夫




【所在地】
ドイツ西部、ノルトライン・ヴェストファーレン州に属する。

【アクセス】
フランクフルト・アム・マイン駅から特急列車で約2時間。