No.22 シエナ歴史地区〔イタリア〕|週刊 世界遺産×富井義夫 - 最新ヨーロッパの人気世界遺産めぐり

No.22
2014年9月14日

〔イタリア〕

シエナ歴史地区

Historic Centre of Siena

 ひと口に「旧市街」というけれど、隣接して新市街を造り、ビジネス・経済の中心地として新市街を最大限に機能させながら旧市街の風情も保護しようという政策をとる都市は多い。一方で、時間が止まったように古い佇まいだけが残る町もある。シエナは後者だ。
 マンジャの塔から見渡せば、町の古さは一目瞭然。むろん、これだけ年輪を刻んだ旧市街の面影を残すからにはそれなりの理由がある。シエナはかつてフィレンツェと覇権を争った一大都市だったのだ。
 当時、教皇派だったフィレンツェに対し、シエナは皇帝派。フィレンツェの教皇派貴族を町に匿い、1260年の戦いでは、シエナは大きな勝利を収めた。町は建設ラッシュに沸いたが、現在の大聖堂も、広場に面した市庁舎も、古い街並みも、このころに建築が始まったものだ。
 文化的にも、ルネサンスのフィレンツェとは対照的に、シエナはゴシックの町と呼ばれる。黒と白のストライプ文様の内装がひときわ目を惹く大聖堂はゴシック建築の傑作といわれ、いまもシエナの町を見守っている。
 しかし、最終的に勝利を収めたのはフィレンツェの方だった。その後フィレンツェは大都市に発展し、シエナは当時の姿のまま残ることになる。「残る」というより「取り残された」というほうが正しいのかもしれないが、だからこそたまらなく魅力的な古い町が現存しているのである。よくぞ残ったというべきところだろう。
 わたしがシエナに入ったのは偶然にもパリオと呼ばれるお祭りの日で、裸馬レースに沸き返るシエナの人々の熱気─というか殺気─にいきなり取り囲まれてしまった。
 このときだけは「世界一美しい」といわれるカンポ広場にも砂が敷き詰められ、仮設の競馬コースができ上がる。撮影は早々に諦めてホテルのテレビで競馬中継を観ていたのだが、人々の熱狂ぶりが画面を通しても伝わってきた。かつてフィレンツェとしのぎを削ったシエナの人々が、年に一度の祭りの日に見せる熱い想い。そこにはなぜだか強く惹かれるものがあった。そんな熱気に触れたくて、久しぶりに夜の街へ繰り出した。
富井義夫




【所在地】
イタリア中部、トスカーナ州シエナ県に属し、トスカーナ州の州都。

【アクセス】
ローマ・テルミニ駅から列車でシエナまで、キウジ・キャンチャーノ・テルメ乗り換えで約3時間20分〜4時間。フィレンツェからシエナまで列車で約1時間30分、または快速バスで約1時間15分。